ツルのカラダ
クロヅル

● ツルの体の構造
長いクチバシ、長い首と足を持つ大型の水鳥です。
形から、クレーン(つり上げて運ぶ機械)の語源にもなっています。
ツルのオスとメスの外見上は、全く同じです。
鳴き合いなどの行動で、区別が付く場合があります。
野生での寿命は、20歳前後と推定されています。
体の部位を減らしたり機能を統合して、飛ぶために軽量化しています。

● 体温
体温は43度あまりで、高めの体温になっています。これにより新陳代謝を促進させて、飛ぶという激しい運動のためのエネルギーを得ています。そしていつでもすぐ飛び立てるように、常にアイドリングの状態を保つ役割もあります。
体温維持のために、羽が役立っています。
寒いときには、首を羽の中に入れたり一本足で立ってもう一本の足を羽の中に入れ、寒さをしのいでいるといわれています。
ツルには汗腺がありません。暑いときには、口から息を吐くことで体の熱を逃がします。


● 羽

羽を広げた状態

鳥の羽は、ある一定の期間で換羽し更新します。
ツル類は、アネハヅルとカンムリヅルをのぞいて体羽は毎年、風切り羽と尾羽は2~3年ごとに一度に抜け替わるといわれています。
ナベヅルやマナヅルに関して、詳しいことはわかっていないようです。
水浴びや砂浴びをして、羽や体をキレイに保ちます。
水浴びのあとや雨上がりなどは、羽を乾かします。
尾の付け根部分にある皮脂腺から分泌される脂肪酸、脂肪、蝋を含んでいる物質をクチバシなどにつけて、体中の羽に塗りつけ羽づくろいをして耐水性などを整えます。 羽は、種類ごとに形が違いそれに応じた働きがあります。

初列風切羽推力を生む働き
次列風切羽浮力を得る働き
三列風切羽翼と胴のつながりを円滑にする働き
尾羽揚力や抗力を変化させる働き
小翼羽迎え角を大きくしたときに失速を防ぐ役目
雨覆羽風切り羽が濡れるのを防ぎ、羽全体の表面をなめらかにして空気の流れを整え、それぞれの羽の能力をあげる役目

● 骨

所蔵 クレインパーク出水


骨は中空構造で軽く、細かな柱が無数にあって強度を保っています。  
背骨は真っ直ぐのままほとんど動かすことはできません。その代わり、首の骨は自由に動かすことができます。

所蔵 クレインパーク出水


竜骨突起が、翼を動かす胸筋を支えています。
また、胸骨は心臓や胃、肝臓を収納できるようになっています。
大腿骨は、骨盤から前に向かって伸びていて、ももの部分は胴体にへばりついています。このため重心が重い胴体に近い部分になり、2本足で歩けるようになっています。
膝のように見える部分は、実はかかとで足のように見えるのは、足のつま先部分です。

● 足
骨、神経、血管でできていて、鱗状の皮におおわれています。
ケンカの時には蹴ったり、爪でひっかいたり強力な武器になります。
カンムリヅル亜科の種類をのぞいて、木にとまることはできないといわれています。
骨折すると治癒が難しい場所です。
鱗がはがれると元に戻りません。化膿跡ができます。
足を流れている血液が冷やされていて冷たいので、氷の上を歩いてもツルの足は凍結しません。そして、血液の温度差による心臓の負担を減らすために、足の根本部分で冷たい静脈血液が動脈血液の熱を奪い温められて体内に戻ります。
前指の間に痕跡的な水かきがあります。

● 裸出部分

ツル科の中でも、タンチョウ・マナヅル・ナベヅル・クロヅル・カナダヅル・ソデグロヅル・アメリカシロヅル・オーストラリアヅル・オグロヅル・オオヅルには、肌がむき出しになった部分があります。
幼鳥の頃には無く、成鳥になるとできます。
興奮すると、血液が透けて赤く目立つようになります。
興奮の度合いにより、広がったり縮んだり、色が濃くなったりします。

● 呼吸器系

図の参考サイト 飼鳥情報センター

高いところを飛び続ける激しい運動を続けても、必要なだけの酸素を供給できるように発達しています。
人と違って気嚢がふいごのように働いて、肺の中を一方通行で空気が流れていきます。
気管の入り口が喉の入り口にあるため、大きな餌を食べても窒息しません。
気嚢は全部で8つあります。
前気嚢 ・・・ 頸気嚢・鎖骨間気嚢・前胸気嚢×2
後気嚢 ・・・ 後胸気嚢×2・腹気嚢×2

空気を吸うと、肺に入ります。そのときに、肺の後ろ側の後気嚢にも空気が入ります。肺の中の空気の一部が前気嚢の方に出て蓄えられます。
空気を吐くときは、前気嚢に蓄えられていた空気と肺の中の空気が出て行きます。この時に、後気嚢に蓄えられていた空気が肺の中に入ってきます。
空気を吸うときも吐くときも、肺の中に新鮮な空気が入る効率の良いシステムになっています。

ツルの気管は、竜骨突起の中でぐるぐると巻いていて長いおかげでそれがラッパのような働きをして、鶴の一声とも言われるように遠くまで良く響きます。
広大な縄張りを主張するために大きいようです。
ナベヅルの気管は、幼鳥や若鳥では短く巻きが少ないです。
3歳以上になると、胸骨内一杯に入り込みます。
3歳以上になると、気管から年齢を特定することは困難になります。

● 消化器系

図の参考サイト 野鳥辞典β版

飛ぶために、軽量化を図った構成になっています。

歯がありません。食べ物はそのまま丸呑みにします。舌の付け根に返しがついていて、中に送り込むようになっています。
食道口から胃までをつなぐ管。
線胃胃液を分泌して餌と混ぜ合わせます。
筋胃小石が蓄えられ、食べたものをすり潰します。「砂肝」部分。
科学的消化吸収が行われます。
総排泄腔尿酸とフンを排出します。

● 感覚器官

よく見えています。
鳥目ではなく、暗くても見えています。
色彩豊かな羽をしている種もあるので、色もカラフルに見えているのではないかと考えられています。
また、紫外線が見えているのではないかとも言われています。
鳥には涙腺がないので、まぶたの下に瞬膜があり角膜を湿らせます。
ツルハシの語源ともなっています。
羽づくろいをしたり、手の役目もします。武器になったりもします。
骨と神経と血管が通っていて、ケラチン質で覆われています。
クチバシは、すり減ってもまた伸びてきます。
細長い円錐状の舌があります。
味蕾の数が少なく、人よりも味を感じないと考えられているようです。
外耳はなく目の横の辺りに5~6mmほどの穴が開いていて、耳羽で覆われています。良く聞こえます。
ほとんど研究はされていないようですが、あまり匂いを感じないと考えられています。